洗顔石鹸でも「合成界面活性剤不使用」「石油系界面活性剤配合なし」など、肌への刺激を抑えた無添加石鹸の人気が高まっていますが、本当に界面活性剤は洗顔石鹸成分に不要なのでしょうか?
 
そこで、界面活性剤は洗顔石鹸に不要な成分なのか、肌への影響(美容効果・安全性・危険性・種類)についてみていきましょう。
 

界面活性剤の役割

界面活性剤の役割 表面張力低下作用と浸透作用

 
水をコップに注いだとき、容器内に水は満たされているのに水がコップから溢れずに盛上っているという様子(上写真)をご覧になったことはありませんか?
 
水には、”表面張力”という、分子同士を引き合う力が働いているため、他の分子に浸透することはありません。
 
しかし、ここに界面活性剤を入れることで水の表面張力が弱まり、他の分子と馴染みやすい状態になります。
(これらの作用を“表面張力低下作用”、“浸透作用”といいます。)
 

界面活性剤の役割 乳化作用と分散作用

 
そして、水と油のように混ざり合わず分離してしまう成分も、界面活性剤を入れることで均一に混ざり合います。
(この作用を“乳化作用”といいます。)
 
さらに、洗顔石鹸の場合は乳化作用の後に界面活性剤の分子が肌の汚れを吸着して取り込み、水の中に分散します
(この作用を“分散作用”といいます。)
 
その状態で泡をすすぎ流すことで、肌に付着していた汚れは肌に再付着されることなく洗い流されます。
 
界面活性剤には、このように“表面張力低下作用”、”浸透作用”、”乳化作用”、”分散作用”という4つの作用を持つため、洗浄成分として肌の汚れを落とすことができるのです。
 
この作用は洗顔石鹸やクレンジング料だけでなく、シャンプー、台所洗剤、化粧品成分など幅広い洗浄製品に活用されています。
 

界面活性剤の役割 起泡作用

 
また、洗浄力以外にも注目したいのが、界面活性剤の起泡作用
 
起泡作用とは泡の状態を作ってそれを安定させること。
 
気体と液体の間で起こる症状で、起泡の周りを界面活性剤が覆っています。
 
泡立ちが良いからといって一概に洗浄力が高いと言えませんが、泡には汚れを吸着する働きがあるため、泡立ちが緩い(弱い)と洗浄力は弱くなることは間違いないでしょう。
 
食器などを洗剤で洗うとき、良く泡立てたほうが汚れを落としやすくなるのも、その現象のひとつです。
 
 

合成界面活性剤は肌に悪い成分?

界面活性剤の洗浄力の強さ

 
「合成界面活性剤は肌に悪い」というのが洗顔石鹸選びの一般論、そのため皮膚に刺激があると言われる界面活性剤が石鹸成分表に記載されていると「購入しない」という方も多いのではないでしょうか。
 
では、洗浄成分として汚れを落とす働きを持つはずの合成界面活性剤が肌に悪いとされる理由は何なのでしょうか?
 
“合成”界面活性剤は、何も手を加えなければ交わることのない水と油を混ぜ合わせることができる化学物質のこと。
 
強い洗浄能力と水と油を混ぜて安定化させることができるため、多くの洗顔料や化粧品等に配合されています。
 
しかし、洗浄能力が高すぎると皮脂膜や角質層からなる皮膚バリア機能を破壊しまいます。
 
肌バリアが低下してしまうと外部刺激(紫外線など)を受けやすくなるだけでなく、肌内部の水分が外に逃げてしまうので乾燥肌に傾いてしまうでしょう。
 
さらに、一部の合成界面活性剤は、健やかな肌を形成するために重要なたんぱく質を変化させてしまう作用を持つことも…。
 
たんぱく質はアミノ酸が結合してポリペプチドという成分を形成し、それらが結合してできる成分。
 
しかし、合成界面活性剤がポリペプチド同士の結合を邪魔してたんぱく質に変性を引き起こしてしまいます。
(たんぱく質を変性させるということは、角質細胞を溶かしている…ということです。)
 
こうしてみると、人間の肌や身体には欠かせない水とたんぱく質を、合成界面活性剤が奪うかもしれないので、「肌への優しさ」にこだわりを持つかた方には犬猿されるのも納得です。
 
※ただし、上記については洗浄力の強い合成界面活性剤についてのこと、全ての合成界面活性剤が当てはまるわけではありません。
 
 

合成界面活性剤にもメリットはある!

合成界面活性剤のメリット

 
先ほど合成界面活性剤が与える肌へのデメリットを紹介しましたが、合成界面活性剤が配合しているから予防できている肌トラブルもあるはず。
 
例えば合成界面活性剤を使用することで、洗顔石鹸の品質が安定しますし、肌の汚れをしっかり落としてくれることで、毛穴つまりや肌のごわつきを予防することができます。
 
ただ合成界面活性剤を毛嫌いするのではなく、安全な成分、危険な成分を見極めて選ぶことが大切になるのです。
 
 

簡単な合成界面活性剤の見分け方

合成界面活性剤の配合有無はパッケージの成分表で確認

 
合成界面活性剤は実に何千種類もあるため、それら全てを覚えて理解するのは不可能に近いのではないでしょうか。
 
ただし、合成界面活性剤の名称には特徴があり、商品パッケージの成分表で見極めることはできます。
 
また、成分表は配合量の多い成分から順番に記載するというルールがあるので、界面活性剤がどれぐらい配合されているのかを判断することも可能。
 
下記に界面活性剤として表記されている一部を紹介するので、これらの成分名が成分表の先頭や中間地点に記載されている場合は、界面活性剤の配合量が多いということになるので、そのような洗顔料は控えるようにしましょう。
 

[洗顔石鹸を含む化粧品によく配合されている合成界面活性剤の一例]
コカミド〇〇、ココアンホ〇〇、ココイル〇〇、〇〇グリシン、アルキル〇〇、オクトキシノール〇〇、イソステアリン酸〇〇、〇〇グルタミン酸、PEG○○、〇〇硫酸、〇〇硫酸

 
 

界面活性剤の種類

界面活性剤の特性を知ることが洗顔石鹸選びに役立ちます

 
“界面活性剤”と聞くと、肌への負担や刺激といった悪いイメージを抱く方も多いでしょう。
 
それは、洗顔では界面活性剤は汚れを落とす役割がある反面、必要以上に肌の水分や皮脂まで奪う可能性もゼロではないから。
 
とは言え、界面活性剤にはいろいろな種類に分類できるので、その特性を知ることで肌にダメージを与えない洗顔石鹸選びに役立つでしょう。
 

界面活性剤と合成界面活性剤

界面活性剤は原料の違いから3つの種類(植物由来・動物由来・石油由来)に分類できますが、それぞれの特性を調べてみると「植物由来だから安心。」「合成界面活性剤だからダメ。」「石油由来は危ない。」とは言い切れないことがわかりました。
 
界面活性剤の原料から、界面活性剤の特徴を見ていきましょう。
 

植物由来・動物由来

 

自然由来でも界面活性剤?!

植物や動物の油を原料として作られた界面活性剤は、自然由来の成分で肌に優しい安全なイメージ。
 
ですが、洗顔石鹸の品質維持や劣化を防ぐために別の成分を用いた界面活性剤も多く、これが“天然界面活性剤”と“天然系界面活性剤(天然系合成界面活性剤)”の違いになってきます。
 
厳密に言えば、自然由来の原料を元にしていても、追加された成分があれば“合成界面活性剤”となるのです。
 
例えば、植物由来の天然界面活性剤”レシチン”は何も加えなければ天然成分ですが、安定化させるために水素を添加した”水素化レシチン”が配合されれば”合成界面活性剤使用の石鹸”になります。
 
しかし、原材料が植物由来なので”無添加石鹸”として販売されていることもあるので、私たち消費者は見極める必要が出てくるでしょう。
 

【基本的な天然系合成界面活性剤の製造方法】
1.天然油脂を分解して、天然アルコールを抽出します。
 
2.抽出した天然アルコールに濃硫酸と水酸化ナトリウムを混ぜます。

 
メーカーによって線引きが違うため難しいところですが、天然由来であっても「合成界面活性剤ではない」「肌に優しい低刺激」とは言い切れないので注意しましょう。
 

【植物由来界面活性剤】
大豆サポニン 卵黄のレシチン バラ科植物のキラヤ ヤシ油 など

 

【動物由来界面活性剤】
牛脂 スクワラン ミツロウ ハチミツ シルク など

 

石油由来

石油由来界面活性剤なのに石油は使用されていない?

 
天然由来と比べ、肌への負担や刺激が大きいとして嫌われがちな石油由来の合成界面活性剤。
 
洗顔石鹸の広告でも「石油系界面活性剤不使用」とアピールしている無添加商品は多いですが、気をつけたいのは、石油系界面活性剤でも必ず石油が使われているわけではない…という点。
 
実は、ラウリル酸やパレスー3硫酸など、かつては石油を原料に作られていた界面活性剤も、現在ではココヤシのヤシ油が手軽で安価な原料が多く使われています。
 
逆に、石油由来のミネラルオイルやワセリンは、不純物がなく肌の負担が少ないので、美肌効果を考えて使われることもあります。
 

【基本的な石油系合成界面活性剤の製造方法】
1.石油を分解して、石油分解アルコールを抽出します。
 
2.抽出した石油分解アルコールに濃硫酸、水酸化ナトリウムを混ぜます。

 
コスメやファンデーションと違い、洗顔は肌へ浸透するリスクがあるため石油系不使用を推奨する意見が多いですが、最後に洗い流す洗顔に対して「そこまで神経質にならなくても良いのでは。」という疑問の声を上げる方もいます。
 
さらに、原料が植物由来のヤシ油の場合もあるため「石油系界面活性剤は絶対ダメ。」とは言えません
 
逆に、石油系由来の成分で肌荒れの恐れがある場合は、洗顔だけでなくメイク用品にも注意していかなければならないでしょう。
 

【石油由来の界面活性剤】
スルホン酸ナトリウム ラウリル硫酸ナトリウム パレスー3硫酸ナトリウム など

 
 

「親油基」「親水基」って何?

界面活性剤の「親油基」「親水基」

 
界面活性剤のついて調べてみると必ずでてくるキーワードが「親油基」「親水基」、何だか難しそうで思考が停止してしまいそうですが、この性質を知ることは決して損にはなりません!
 
界面活性剤の働きに水成分と油成分を馴染ませることが挙げられます。
 
それを成しえるには界面活性剤を分子で見たときに分けることができる「親油基」「親水基」の性質が大きく関わっています。
 
親油基は油に馴染みやすく、親水基は水に馴染みやすいという2つの性質を、界面活性剤の分子は持ち合わせているので水と油と相反する2つの成分を結びつけることができるのです。
 
 

界面活性剤の構造の違い

界面活性剤の構造の違い

 
原料を問わず、構造の違いからも界面活性剤を種類分けすることができます。
 
それは、「水に溶けたときにイオンになるか?ならないか?」という点に注目した分類方法です。
 

イオン性界面活性剤

 
界面活性剤が水に溶けたときに、その水がイオン化するかどうかで以下の3つに分けることができます。
 

分類作用成分例
陰イオン界面活性剤(アニオン)汚れ落とし作用がある石鹸、ラウリル硫酸ナトリウム
陽イオン界面活性剤(カチオン)柔軟や殺菌作用のある塩化ベンザルコニウム
両性界面活性剤アルカリ性や酸性のph値によりそれぞれに対応できるレシチン

 
特に注目したいのは、石鹸が該当する“陰イオン界面活性剤”です。
 
皮脂やホコリなどの肌の汚れを吸着する効果が高い陰イオン界面活性剤は、洗顔料(スキンケアアイテム)向きの界面活性剤として、よく使われています。
 
もうひとつの成分例ラウリル硫酸ナトリウムは石油由来に該当するため、構造上で考えるなら天然由来も石油由来も同じグループです。
 
イオン化することで肌表面の陽イオンに陰イオンが通過するため、洗浄作用や美容効果の浸透力は高まるぶん、石油由来の成分が気になる方はあらためて原料の確認が必要になるでしょう。
 
かたや“陽イオン界面活性剤(カチオン)”は殺菌効果があるため、洗浄よりも柔軟剤やリンスに使われることが多いです。
 
さらに、アニオンとカチオンのメリットを兼ね備えている“両性界面活性剤”は、いずれかの効果を発揮している場合、もう片方のメリットである洗浄や殺菌効果を弱めてしまうため単体で使わることはあまりありません。
 

非イオン界面活性剤

水に溶けてもイオン化しないのが“非イオン(ノニオン)性の界面活性剤”です。
 
イオン性界面活性剤は肌へ浸透しやすいので、成分によっては自ずと肌への刺激が強くなりますが、非イオン界面活性剤はイオンを持たないことから刺激も比較的マイルド
 
また水や電解質の影響を受けにくく、様々な界面活性剤と併用できる利点があることから幅広い商品に使われています。
 
例えば、高級アルコールなど親油基を持つ原料や、多価アルコールなど親水基を持つ原料に非イオン性界面活性剤を付加重合して結合の度合いを変え、肌に低刺激な洗浄剤に使用するなどといったことも。
 
直接肌に触れる、化粧品やシャンプーに使われている洗浄剤の多くは、肌ダメージを考慮して非イオン性界面活性剤が使用されています。
 

【非イオン界面活性剤】
ラウラミドEDA ステアリン酸グリセリル オレイン酸PEG- オレス- など

 

肌質から考える界面活性剤

合成界面活性剤の向き、不向きの肌質とは?

 
こうして考えてみると、全ての界面活性剤が悪いわけではなく、上手に使って肌に取り入れることが大切なのだということがわかります。
 
例えば、過剰な皮脂分泌が主な要因である思春期ニキビや脂性肌(オイリー肌)の方は、個人差はあるものの、洗浄力が強めの界面活性剤配合の洗顔料を使うことで、毛穴の奥の汚れまでさっぱりと洗い上げることができるでしょう。
 
一方、界面活性剤は肌に残留・浸透しやすいことを考えると、乾燥肌や敏感肌に傾いている場合はそれが原因となって肌荒れやかゆみを引き起こし、症状を悪化させてしまう可能性も・・・。
 
今、日本で販売されている化粧品類に使われている界面活性剤には、ほとんど毒性がないともいわれていますが、それは“一般論”。
 
自分の肌質を考えて、サンプル品や全額返金保証を利用して試しながら洗顔石鹸選びをすることが美肌への近道になることは言うまでもありません。
 
 

純石けんは合成界面活性剤無添加?

純石鹸も界面活性剤配合の石けんです。

 
洗顔や体洗いなど、様々な用途に使うことができる純石けんは、「無添加で肌に優しい」と特に肌トラブルを抱えている方からの人気を集めている石鹸。
 
純石けんは“石けん素地98%以上”、“純石けん分98%以上”、“脂肪酸ナトリウムor脂肪酸カリウム98%以上”であることが定義されています。
 
ただ、その石鹸素地自体が油脂類や苛性ソーダで作られていますから、厳密に言うと純石鹸だって界面活性剤のひとつとなるでしょう。
 
ですが、石けん素地として取り扱われる脂肪酸ナトリウム・脂肪酸カリウム(油脂類や苛性ソーダ)は脂肪系界面活性剤(陰イオン界面活性剤)、肌に低刺激な成分なので安心して使用できるでしょう。
 
また、脂肪酸ナトリウムや脂肪酸カリウムといった石鹸素地に使用されている界面活性剤は、“界面活性剤には含まれない”という認識なので、上記の石鹸素地以外に界面活性剤の成分記載がなければ“界面活性剤不使用”と考えて良いでしょう。
 
 

界面活性剤との付き合い方

日本の界面活性剤は安全性が確認されています

 
界面活性剤についての考え方はメーカーや商品ごとに違いも大きく、原料や構造の種類も複雑なため「これなら安心。」「これは絶対ダメ。」と言い切ることはできません。
 
ただ、日本で販売されている洗顔料を含めたスキンケア用品類は、安全性の確認された成分と配合量だけで作られています。
 
また、固形石鹸でもフォームタイプでも、界面活性剤が一切使われていない洗顔料はありません。
 
過度に界面活性剤を避けるのではなく、肌に合うのかどうか?そして、界面活性剤のメリットやデメリットから自分の肌に合うのを探していくのが大切。
 
自分なりに界面活性剤の使い方(付き合い方)を考えて、美肌ケアに繋がるアイテムを選んでいくのがおすすめです。
 

聞き慣れない言葉が多く難しい話も多かったけど、界面活性剤はけして絶対に肌の負担に繋がるものではない…というのがわかりましたね?
 
汚れを落とすための洗顔石鹸だからこそ、洗浄効果を発揮する界面活性剤の魅力も受け入れて、肌に合う石鹸を見つけましょう!