殺菌が1番良いとは限らない!?その肌トラブルは何の菌のせい?

 

肌トラブルの原因にはいろいろなものがありますが、肌の常在菌が悪さをしている可能性は無視できません。

 

そんなときに頼りたいのが、殺菌作用のある洗顔石鹸ですが、洗顔料をはじめとした化粧品に配合される殺菌成分にもいくつかの種類があり、正しく選ばなければ症状が悪化してしまう恐れも…。

 

そこで、今回は肌に生息する常在菌とそれらが引き起こす肌トラブルについてお話し、さらに殺菌成分についても簡単に説明します。

 

気になる肌トラブルの原因は常在菌

意外に!?肌に良い働きをしてくれる表皮ブドウ球菌

 

常在菌とは、腸に棲む腸内細菌のように、私たちの皮膚に常に存在している数百種類もの菌の総称です。

 

「菌」と聞くと悪いイメージを持ちがちですが、外部からの刺激から肌を守るバリア機能や保湿、衛生をサポートして善玉菌もあり、けして邪険にはできません。

 

中でも善玉菌の代表とも言われるのが、表皮ブドウ球菌です。

 

表皮ブドウ球菌は皮脂や汗を餌にしてグリセリンと脂肪酸をつくりだし、肌表面の弱酸性というphバランスを整えてくれる菌。

 

肌に悪影響を与える病原菌の繁殖を抑え、そのうえ肌に適度な潤いまでもたらしてくれるので、清潔性を保ってくれるだけではなく、保湿もできる頼れる存在だということですね。

 

ですが肌に良くも悪くも作用する日和見菌や、悪影響にしかならない悪玉菌も存在しているため、常在菌のせいで肌トラブルを引き起こすことも当然あります。

 

重要なのは常在菌のバランスを過度に乱さず、スキンケアや生活習慣でコントロールしていくことなのです。

 

ニキビ

ニキビの原因はアクネ菌

 

プロピオニバクテリウム属の常在菌であるアクネ菌は、ニキビの原因となることで有名な菌といえます。

 

アクネ菌、と聞くだけで悪いイメージを思い浮かべる人も多いかもしれませんね。

 

そんな人にとっては意外かもしれませんが、実はアクネ菌も表皮ブドウ球菌と同じく善玉菌。

 

皮脂を脂肪酸とグリセリンに分解し、皮脂膜作りのサポートをしてくれる頼もしい菌なのです。

 

ただし、皮脂分泌の乱れやターンオーバーの異常などによって毛穴付近の角質が厚くなってしまうと、状況は一変。

 

毛穴の出口が狭まり、こうなると分泌された皮脂がその中にどんどん蓄積していくのは止められません。

 

そして、たっぷりの皮脂の中でアクネ菌が増殖し、毛穴の中は皮脂とアクネ菌が排出した脂肪酸でいっぱいになると油分は酸化されていきますが、酸化した油分は肌のサビとも言われる刺激物。

 

毛穴が黒ずんで見えるだけでなく、それにより毛穴が詰まれば炎症を起こしていわゆる赤ニキビとなって痛みやかゆみが生じ、悪化すれば膿がたくさんたまって見た目にも目立つ黄ニキビになってしまうのです。

 

強引に潰せば肌表面にクレーターとして残ったり、または色素沈着してニキビ跡として残ってしまう可能性も高くなります。

 

とはいえ、アクネ菌が善玉菌である以上「ニキビの改善=アクネ菌の殺菌」とは必ずしも言えません。

 

過剰に増えすぎないように肌のコンディションを整えていくことが、アクネ菌との上手な付き合い方だといえるでしょう。

 

顔ダニ

顔ダニも良い働きをしてくれるけど…

 

顔には2種類のダニが住んでいるといわれており、正確には虫であり菌ではありません。

 

毛穴の中の毛根付近に住むのはデモデクス・フォリキュロム(ニキビダニ)であり、ニキビの原因になることからアクネ菌と混同されることもありますが、根本的にまったく違う生物だと考えましょう。

 

もう1種類のダニはデモデクス・ブレビス(コニキビダニ)であり、毛穴の中でも主に皮脂腺の近くに住んでいます。

 

2種類のダニは通常であれば肌に悪影響を与えることはほとんどなく、日中は毛穴の中で過ごして夜間に肌表面に表れ、余分な皮脂などを食べることでpH値を調整するありがたい存在です。

 

ただし毛穴の中に死骸や脱皮した殻、排泄物がたまってしまうことは避けられません。

 

顔ダニが増えすぎて不要な異物の量が増えれば、当然肌にとっては大きな刺激となります。

 

症状としては、肌が赤くなって小さなブツブツができ、触ると痛みが生じることが多いのも特徴的。

 

中には、毛根付近に生息するニキビダニのせいで抜け毛に悩まされる場合もあるため、顔ダニも菌と同じく、きちんとその生存バランスをコントロールしていかなければなりません。

 

脂漏性皮膚炎

脂漏性皮膚炎はマラセチア菌の影響によるもの

 

脂漏性皮膚炎は多くの赤ら顔の原因であり、小鼻まわりに赤みやかさつきが生じるのが主な症状。

 

ひどい場合は症状が頬全体や額にまで広がり、体のあちこちに症状が表れてしまうことも。

 

皮脂分泌の多い人によく見られる症状かというとそういうわけでもなく、皮脂が少ない人にも見られ、なんらかの要因による皮脂の異常分泌が原因のひとつと考えられています。

 

はっきりとわかっているのは、脂漏性皮膚炎が起こっている部位にはマラセチア菌というカビが多く見られ、その増殖が発症や悪化に関わっているということ。

 

マラセチア菌も常在菌のひとつであり皮脂を脂肪酸やグリセリンに分解する働きをもつものの、皮脂量が増加しすぎて分解された脂肪酸も増えれば肌荒れにつながりやすくなるのは当然の流れです。

 

脂漏性皮膚炎はニキビよりは痒みや痛みはないものの、赤みとカサつきは目立ちやすく、その上慢性化しやすいのが悩みどころ。

 

「これってもしかして脂漏性皮膚炎?」と思ったら、なるべくはやいうちに医師の診察をうけて、外用薬を処方してもらうといいでしょう。

 

とびひ

とびひは黄色ブドウ球菌やレンサ菌が原因のひとつ

 

正式名称が伝染性膿痂疹(でんせんせいのうかしん)であるとびひは、夏の子供に多く見られる皮膚病のひとつです。

 

虫刺されなど強くひっかくことで爪に住み着いている黄色ブドウ球菌やレンサ球菌が傷に入り込み、それがあちこちに広がることで引き起こされます。

 

子供に多いとはいいましたが、大人でも悩んでいる人はけして少なくはありません。

 

赤みとかゆみに加えて米粒大から親指大の水疱ができ、破れるとかなり痛いので早急に治療が必要ですね。

 

善玉菌の代表である表皮ブドウ球菌と名前こそ似ていますが、黄色ブドウ球菌は悪玉菌の代表格。

 

常在菌のため人から人へと感染することはありませんが、肌内部で増殖すると患部がどんどん広がっていくため、自己治療や放置して完治を待つのではなく処方薬で治療するのが一番です。

 

ちなみに、夏になるとニュースで耳にする話題ですが、食べ物から増殖した黄色ブドウ球菌を摂取すると食中毒を起こしてしまいます。

 

 

洗顔石鹸で殺菌するのが良い?

「殺菌=肌に良い」とは限りません!

 

肌の常在菌はときとして私たちにやっかいな肌トラブルをもたらしますが、だからといって、むやみやたらに殺菌すればいいとも限りません。

 

肌にとっていい働きをしてくれる善玉菌を殺菌して殲滅させると、乾燥やバリア機能の低下、ターンオーバーが乱れるなどして別の形で肌トラブルを引き起こす恐れがあるからです。

 

よって、殺菌で菌をなくすのではなく、悪玉菌の増殖を抑えて善玉菌とのバランスを整えていくことこそ、ベストな対策であるといえます。

 

これは肌のコンディションを整えることとも直結しており、美肌を求めるのであれば忘れてはならないポイントですね。

 

 

有名な殺菌成分の働き

最近は殺菌成分を配合した洗顔料も数多くありますが、その成分で期待できる効果や気を付けたい注意点についてまとめました。

 

イオウ

アクネ菌に効果的なイオウは大人ニキビに不向き

 

ニキビ治療薬でお馴染みのクレアラシルにも配合されている硫黄(イオウ)は、アクネ菌を減少させる殺菌作用に加え、角質を柔らかくする効果が期待できる優秀な成分です。

 

ただし、皮脂の分泌を抑制する働きもあるので、もともと肌にべたつきやテカリに悩んでいる人にはぴったりですが、乾燥が原因で皮脂詰まりを起こした大人ニキビにはおすすめできません。

 

乾燥が加速してさらに症状が悪化する恐れもあるので、使用においては肌状態の正しい見極めが必要です。

 

イオウを含んだ洗顔料としては、老舗の製造ブランドから販売されている「ロゼット洗顔パスタ」のイオウシリーズがあります。

 

有効成分としてイオウを配合した医薬部外品であり、炎症を抑える効果のあるグリチルレチン酸ステアリルも配合されているので、思春期ニキビに悩む人にはぴったりなアイテムです。

 

普通肌、荒性肌、メイクも落とせるタイプの3つがあるので、好みで選んでください。

 

トリクロサン・トリクロカルバン

不使用の切り替えが進むトリクロサンやトリクロカルバン

 

どちらも抗菌および殺菌作用をもつ化学成分であり、殺菌作用のある有名な石鹸によく利用されています。

 

しかし、2016年9月、米国食品医薬品局(FDA)はトリクロサンなどを含む抗菌石鹸の販売を、肌や環境への悪影響という懸念から1年以内に停止する措置を発表しました。

 

日本ではトリクロサンやトリクロカルバンによる健康被害の報告そのものはありませんが、日本化粧品工業連合会や日本石鹸洗剤工業会はこれらを配合している商品に関して、配合しない商品への切り替えを各メーカーなどに促しています。

 

トリクロサンが配合された製品としては、「グリンス殺菌消毒用薬用せっけん液」が挙げられるでしょう。

 

医薬部外品のハンドソープであり2017年10月現在ではネット上でも購入できますが、いずれこの商品も別の商品に切り替わるか、配合成分のリニューアルが行われるはずです。

 

また、トリクロカルバンを含む参考商品としては、バイバイばい菌プロジェクトも展開している、ハンドソープの定番品「薬用せっけんミューズ」があり、こちらは2016年9月に配合成分の切り替えを発表しています。

(ただし、2017年10月現在、まだ販売元での切り替えは行われていません)

 

イソプロピルメチルフェノール

旧表示指定成分のイソプロピルメチルフェノール

 

抗菌作用だけではなく抗真菌作用もあり、アクネ菌に加えてマラセチア菌をはじめとしたカビの対策にも効果的なのがイソプロピルメチルフェノール。

 

しかし、イソプロピルメチルフェノールは旧表示指定表示成分でもあるため、避けた方がいい殺菌成分ですね。

 

(旧表示指定成分とは、化粧品の全成分表示が義務化する前、肌トラブルを起こす恐れがあるとしてパッケージなどに明記することを義務づけられた成分です)

 

現在、洗顔料でイソプロピルメチルフェノールを配合した製品はありませんが、ハンドソープではいくつか見つけることができます。

 

例としては「ファーマアクト薬用泡ハンドソープ」があり、こちらはポンプを押すとまるでムースのような泡が出てくるのが特徴。

 

保湿成分のヒアルロン酸も配合されているので、手をしっとりなめらかに洗い上げることができるとアットコスメのクチコミでも評判です。

 

サリチル酸

イオウより低刺激で大人ニキビにもオススメなサリチル酸

 

サリチル酸は雑菌の繁殖を防いで角質を柔らかくする、イオウによく似た作用をもつ成分。

 

ですがサリチル酸は皮脂分泌を過剰に抑制することなく、毛穴の詰まりを防げるのがイオウとの大きな違いと言えます。

 

そのため、過剰な皮脂分泌が原因の思春期ニキビだけでなく、乾燥が原因の大人ニキビにも効果を発揮できるのです。

 

加えて、化粧水や乳液などスキンケア用品の浸透力を高めるのにも役立つため、サリチル酸をスキンケアに取り入れれば効率的なニキビケアに取り組むことが可能。

 

ただし、洗顔後はピーリング効果によって肌が乾燥してしまうこともあるので、保湿ケアは少しだけ入念にした方がいいでしょう。

 

参考商品としては、にきび予防に効果ありとして若い世代に人気がある「ファーストクラッシュ」があります。

 

天然成分を数多く配合しており、ノンオイル・ノン着色料処方の無添加タイプなので、肌にとても優しいのが特徴ですね。

 

 

グリチルリチン酸ジカリウム

植物由来の抗炎症作用グリチルリチン酸ジカリウム

 

グリチルリチン酸ジカリウムは、漢方で使われる天草由来の成分にカリウムを化合したものです。

 

抗炎症作用のある有効成分であり炎症を伴うニキビの症状緩和に役立つものの、ニキビそのものを予防する効果は残念ながら期待できません。

 

そのためグリチルリチン酸ジカリウム配合の洗顔料は、洗浄力で毛穴の詰まりを防いだり、肌のバランスを整えるケア成分が配合されているものが多い傾向がみられます。

 

グリチルリチン酸ジカリウムを配合している商品としては、「ノンエー(NonA)」や「然よかせっけん」が挙げられますね。

 

「ノンエー」はニキビを予防する洗顔石鹸として開発された商品であり、豊かな泡立ちと潤い成分を豊富に含んでいるところが特徴で、ニキビに悩んでいる人におすすめ。

 

「然よかせっけん」もキメが細かくもちもちの泡立ちが特徴で、くすみや黒ずみ、詰まりといった毛穴の悩みを含む数多くのトラブルの改善が期待できる洗顔料です。

 

また「然よかせっけん」は超微細シリカパウダー配合なので、毛穴を押し広げずに奥の汚れまで綺麗に洗い上げる吸着力も魅力と言えます。

 

「ノンエー」「然よかせっけん」はいずれもネット通販限定のブランドですが、定期購入で注文すれば自宅まで届けてくれるのも人気です。

 

 

 

 

覚えておきたい殺菌向けの洗顔石鹸選び

殺菌ではなく、悪玉菌を増やさないケアがオススメ!

 

殺菌効果のある洗顔石鹸選びにおける注意点としては、やはり有効成分が影響する肌への刺激。

 

一口に殺菌作用のある石鹸といっても殺菌成分自体にいくつもの種類があり、効果があることもありますが、肌トラブルの症状によっては逆に悪化したり、別の深刻な悪影響を与える恐れも否定できません。

 

肌トラブルを改善させるために殺菌作用のある石鹸を選ぶなら、サリチル酸やグリチルリチン酸ジカリウムといった、比較的安全性の高い成分が配合されたアイテムを選ぶといいですね。

 

そうすれば、炎症を抑制しつつ菌の増殖を防ぎ、肌のコンディションを徐々に整えていくスキンケアが可能です。

 

最初はなかなか効果を感じられないかもしれませんが、時間をかければきっと理想の肌へと近づくことができるでしょう。

 

肌トラブルの原因になりやすい常在菌ですが、必ずしもすべて殺菌すればいいというわけではありません。

大事なのは、常在菌のバランスを上手にコントロールし、過剰な繁殖を防ぐことです。

そんなとき、殺菌作用のある汚れ落としの洗顔石鹸を利用するのは賢い選択のひとつ。

自分の症状にあった殺菌成分を選び、肌のコンディションを整えながら美肌を目指しましょう。